物語の思考法

~2次元と3次元をつなぎたい~

冴えない彼女の育てかた 8巻 (2015) 感想 「過去を踏まえて次へ進むこと・第2回戦の始まり」

冴えない彼女の育てかた8 (富士見ファンタジア文庫)

 
評価:★★★★☆(星4つ)
 
アニメ2期の続き。僕にとっては初めてアニメにはない展開を見る巻だった。
 
 
 
今まではアニメの風景や流れが頭の中にあったから、どうしても二番煎じ感が拭えなかった。
 
 
 
けど今回初めてアニメの描写なしの展開を見てこう思う。
 
 
めっちゃ面白いぞこれ!
 
 

 

 
1巻からず〜〜〜っと思って以前の感想にも書いたけど、この「冴えかの」は本当に読みやすい。会話ベースの展開、地の文も倫也くんの心情がベースなので、地の文すらも会話、金髪ツンデレツインテールや清楚系黒髪先輩、小動物系後輩などキャラも立っている。そして挿絵が美しい……
 
 
 
 
7巻まではアニメ効果に引っ張られていたけど、今回から頭の中で情景を想像するのは楽しかった。
 
 
 
 
小説でここまでの下地があるのだから、アニメにする際にさらにブラッシュアップができる。5巻の詩羽先輩のセリフを借りると、下地があるからこそ叩きあげることができる。実際アニメは本当に上手く展開を整理して叩き上げていた。特に2期9~11話の部分は別々の単行本に収録されている話や展開を綺麗にまとめている。今はアマゾンプライムで配信しているので、僕は定期的に見ています。
 
 
 
それくらい良いんだよ! 特に2期11話の坂のシーンが!
 
 
 
今回は新生blessing softwareの門出、加藤と英梨々の確執、波島兄妹の参戦、「冴えない彼女の育てかた(仮)」のプロット作成など新たな動き出しがあった。派手な注目は浴びないけど、徐々に株を上げていく加藤も最高でした。もう相棒というか、パートナーというか、正妻感がプンプンしていました。よく考えたらこの8巻の要所要所がアニメにも取り入れられていて、本当にアニメの出来の素晴らしさが噛み締められた。もう一回見たくなった。
 

 

M♭

M♭

 

 
 
 
 
 
 
 
 

過去を踏まえて次に進む

 
無茶をするときも前向きに。
 
 
 
何かと戦う時は力を合わせて。
 
 
 
加藤との、その誓いに沿うように、俺は、サークルの方向性を少しだけ変えてみた。
 
 
 
 
今までの『blessing software』は、俺のワガママがまず第一にあった。
 
 
 
俺のやりたいことをメンバーに押しつけて、俺よりも遥かに優秀なクリエイターたちがそれを形にしてくれるという、俺にとって理想的で、傍から見て歪なサークルだった。
 
 
 
そんな俺たちの作り上げたゲームは、最高だったって今でも信じているけれど、色々と無理も起きたし、綻びもできた。
 
 
 
それは、大して能力のない俺が、俺よりもよっぽど才能のある人たちを、無理矢理引っ張ったから。
 
 
 
だから、メンバーにはストレスになり、代表には、プレッシャーや負担になった……のかもしれない。
 
 
 
「……もし、この企画そのものが気に入らなければ、そう言ってくれてもいい。そしたら最初から一緒に練り直そう?」
 
 
 
だから、新生『blessing software』は『何を作るかを決める』ところから、みんなで考える。俺が、皆を引っ張るだけの力を持ち合わせていないなら、最初からみんなで一緒に引っ張っていけばいい。
 
 
 
もちろんその方法にも、大きなリスクはある。
 
 
 
何より、一人でもやる気と能力がなければ頓挫してしまう。
 
 
 
烏合の衆なら、今まで以上に何も決まらずに企画もサークルも崩壊してしまう。
 
 
 
「まぁ、そうなった場合、スケジュールは今以上にキツくなるけどな」
 
 
 
けれど、俺が集めたこのメンバーは、伊達じゃない。
 
 
 
今までも、今からも、人選だけは間違えたと思ったことがない。
 
 
 
だから俺は、今まで以上に、メンバーを信じて、任せて、頼る。
 
 
 
そして俺も、今まで以上にメンバーに信じられて、任せてもらって、そして頼られる存在に……

 

 
 
サークルが崩壊した原因は、シナリオ作成が遅れてしまったことと、それが原因で英梨々に負担をかけてしまったことにある。加えて、あらゆるものが倫也くんを中心に動き、英梨々に関しては倫也くんが背負い込みすぎたことが原因になっている。
 
 
 
 
つまり、何もかもが経験不足から生じた結果になっている。倫也くんは初めてゲームを企画して、自分ができない部分に関しては誰かを動かして、音楽もプロモーションも何もかも手がけて、結果的には1本の作品をまとめ挙げた。
 
 
 
 
現実の点から見れば、どう考えても合格点。むしろ1回目から上手くいきすぎじゃね? と思うがそこはフィクションということで…… そんなこと言っていたらあらゆる物語が成り立たない。
 
 
 
 
大事なのはやりたいという意思を持って行動して、それをやりきったところにある。いろんな歪さはあったにせよ、ゴールには辿り着いている。そして今回の巻で1本作った経験を踏まえて、2つ目の作品に生かしている。
 
 
 
 
結局、行動してみるのが一番大事ってことですね。倫也くんは行動を経て、苦難を乗り越えて経験を得た。言葉は単純だけど、やって見ないとわからないことなんて沢山ある。僕も文章を書くなんて簡単だと思っていたけど、実際にそうはいかない。毎日書いて、文章の書き方の本を読んで、また実践する。それを繰り返して、思ったことをかけるようにはなってきた。まだ工夫の余地はあるけど。
 
 
 
まさに倫也くんがやっていることに対して多動力の一説を上げておく。
 
  • できるかどうかはおいておいて、とにかく手をあげよう。

 

  • 最初は勇気がいるが、まず一歩を踏み出すことが大切だ。
 
 
 
倫也くんがゲームを作り始めたのは、とにかく加藤をメインヒロインとしたゲームを作りたかったから。それの意思を元にして、実際に行動してやりきった。行動を反省して次に活かすのは、行動したからこそできること。8巻では1~7巻までの倫也くんの成長が感じられた。
 
 

 

多動力 (NewsPicks Book)

多動力 (NewsPicks Book)

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

ストーリーの作り方講座

 
「そもそもさぁ、ゲームのストーリーの問題点って、どういうもの? 面白いかつまんないかみたいな、感覚的なことでいいの?」
 
 
 
「いや、それは……」
 
 
 
つい、『え、そこから……』と口に出してしまいそうになるのを飲み込み、白紙を一枚……いや三枚取り出して、それぞれにボールペンを走らせる。
 
 
 
「そうだな、じゃあ、いくつかポイントを挙げておこうか」
 
 
 
『ストーリープロットの問題点』というお題目を出されただけで、次から次へと罵詈雑言を繰り出し企画者の心をバキバキに折ってくるような真似は、そりゃもうキャリア充分の人気作家でもないと無理に決まっている訳で……

 

 
 
5巻の感想でも書いたけど、ストーリーの書き方の話になるとキャラクターを飛び越して丸戸さん(作者)本体がにじみ出ている。ストーリーの作り方がわかる本ですよ、この本。
 
 
 
 
冴えかのはお仕事ものである以上、作者の経験の深さがモノを言う。バクマンあたりから漫画家の漫画が増えたように、お仕事もののアニメや小説も多くなってきている。ただのテンプレ学園ものやファンタジーじゃウケなくなったからだと思うけどね。最近はやりの異世界ものにもお仕事ものは多い。異世界食堂とか、上司とダンジョンとか、プログラマーが転生とかね。
 
 
 
 
そこではいかに深い知識をわかりやすく面白く紹介できるかが鍵。そういう意味では冴えかのは丸戸さんの経験をキャラクターを通して楽しく伝えられている。文章を書いている身としてはストーリーの作り方というのはとても興味深かった。2巻のプロットシート、5巻のストーリーの書き方などなどすごく貴重です。僕もしっかり書きたいなーと思っているので参考になりまくりです。
 
 
 
 
 
 
 
 

最後に

波島兄を仲間にした倫也くん一行は順調な滑り出しを見せる。しかしその一方で英梨々は化け物になっていた……
 
 
 
そんな感じだった。
 
 
 
化け物作家になりつつある英梨々の次の展開が楽しみです。
 
 
 
それではー