物語の思考法

~2次元と3次元をつなぎたい~

冴えない彼女の育てかた 11巻 (2016) 感想 「加藤のさりげない魅力と丸戸さんの創作理論」

冴えない彼女の育てかた 11 (ファンタジア文庫)

評価:★★★★☆(星4つ)
 
 
 
 
加藤が真のメインヒロインに格上げされる巻だった。
3周目が開始された8,9,10巻を通して倫也くんのシナリオを書く話が中心になっているけど、もはや作者である丸戸さんがどうやってこのさえかのを書いたのか?という説明のお話になっていた。
 
 
 
倫也くんがヒロインたちとの経験を元にシナリオを書く。だけどその書き方やシナリオの作り方のなかでどのタイミングでキャラクターを登場させて、好感度をあげるか、とか考えている。それってあなたがシナリオ考える時に思っていたことですよね?と聞きたくなった。
 
 
 
本当にシナリオや物語を書きたい人にはオススメの本です。丸戸さんの創作理論が詰まっている。
 
 

 

 
 
 
 
 

加藤のさりげなさの魅力

僕はあからさまなエロ描写とか嫌いなので、美智留とか出海ちゃんとかの描写はあまり好きに慣れない。可愛いけどね。というかこの2人も本編でもさらっとさらわれているだけで、それほど重要に扱われてはいない。エロ要員なのだろうか…
 
 
 
まあそれはいいとして、だからこそ加藤のようなさりげない会話だけで可愛いなって思わせるのはほんと心にしみてきた。後半の方はかなり集中して読めました。画面越しにチューするのかと思ったら、さすがにそれはなかったね……
 
 
 
ペトロニウスさんの感想にもあるのだけど、ある意味加藤は倫也くんと同じ目線で成長している。英梨々や詩羽先輩は元からいるステージが異なっている。だからこそ選択肢は加藤にしかないのかなぁとか思っていた。
 
 
 
 
ぜひ11巻を読んだ人はペトロニウスさんの評論も読んで見て下さい。ネタバレはないので、12巻は読んでなくても大丈夫です。
 
 
 
この本の中心となる部分はこんなところにしておいて、僕としてはさっきも書いたけど、加藤のシナリオよりビビッとくるものがあった。
 
 
 
 
 
 
 

丸戸さんの創作理論が透けてくる

『そんなふうに、今まで順調に刊行を重ねてきた作家が、突然、あるいは徐々に遅筆になっていくのには、いくつか原因がある……』
 
 
 
『一つは単純に、今までのクオリティで満足できず、今よりいいものを求めて試行錯誤する……いわゆる、目が肥えたって奴だ』
 
 
 
『そういう奴の進む道は単純だ。理想にたどり着いて一流になるか、理想を自分の技術レベルまで落として二流になるか、理想に辿り着かずに消えるか……』

 

 『頭が肥えた……スキルが上がったせいで、その先にある沢山の進むべき道……選択肢が見えてしまうんだな、今の君には』
 
 
 
『書いている時にはこちらの方向性が最適と思って物語を進めていっても、ある時ふと、一度は消した可能性を思い返してしまう』
 
 
 
『そして、そちらの方が良かったのではないかという疑心暗鬼に囚われて、手が止まる
 
 
 
『そうなるともう駄目だ……今の物語を進めることに疑念が生まれたら、その物語を信じられなくなったら、いいものは書けない。自然と筆は進まなくなる』
 
 
 
『しかし今さら、自分の心の中で立てた"選択肢"のところに戻って、別の物語を書き始めてもいいものになるのかもわからない……進むも地獄、戻るも地獄。どっちつかずの、友順普段主人公、じゃなくてライターの出来上がりだ』

 

 
『結局、どちらもやがて行き詰まるんだよ。新しいルートばかり開拓し続けると、いつしか先鋭化してユーザーの門戸を狭める。いつものルートをこじ開けてばかりいると、いつしか本当にマンネリ化して、やっぱりユーザーの門戸を狭める。初心者か、信者しか食いつかなくなる。』
 
 
 
君がこれからもずっと物語を作っていきたいのなら、どちらの能力も手に入れろ。この一作で燃え尽きたいのなら、勝手にどちらかを選んで突き進めばいい』

 

 
 『十手先まで読むな。先の先の先、せめて三手先までにしろ。でないと長考に入る。将棋だってそうだろ?』
 
 
 
駄目だと思ってもまずは戻るな。一度、最後まで暴走しろ
 
 
 
『一週間、なにも書けないのと、一週間のテキストを全部捨てるのって、一週間後から見てみれば、結果的には同じだろ? それどころか、書いたことで自分のスキルが上がってる。アドバンテージさえある』

 

 
紅坂朱音のセリフだけ抜き出してあります。なので途中で文章が繋がらない場合があります。
 
 
p119 ~ p137は創作理論のオンパレードだった。紅坂朱音ではなく、また丸戸さんが透けて出てきた。きっと上記のことを常に考えながら書いているのだろう。って以前にも何回も同じようなことは書いたけど。
 
 
 
アニメの2期の続きが見たくて読み始めたのだけど、加藤やその他ヒロインのイチャイチャより、この人の物語の書き方や業界の裏話を知るために読んでいる。それくらいこの人の経験がずっしり重い。ラノベを読んで気づいたことは、やっぱりアニメ版はよくできているということと、この人自身の創作理論がすごいということだった。
 
 
 
 
イチャイチャはアニメの描写の方が圧倒的に優れていた。当たり前だけど。それにアニメの売り上げを伸ばすのに重要な要素なのでとても重要。字だとエロさは伝わりにくい。それを特殊なカメラワークと声優のパワーによってヒロインの魅力を爆上げしているアニメ版さえかのはすごい魅力的になっていた。
 
 
 
 
掛け合いは面白かったし、加藤の声優の安野さんの演技とか見入ったからこそ、倫也くんの精神的な成長を見せる2期11話まで見ていられた。加えてラノベの構成を入れ替えることによって原作をより感動できるものにしていた。今でもたまにちょろっとシーンごとに見ているくらい。
 
 
 

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ラノベはやっぱり本質的には内容が一緒だから、若干つまらない部分はあった。けど、それはアニメが面白かった反動。やっぱり視覚の要素って大事だし。それでもアニメでは気づかなかった部分が、作者の丸戸さんの創作理論についての描写だった。確かにアニメでも簡単には言っているけど、それは原作の一部に過ぎなかった。
 
 
 
 
アニメでぐちぐち言われてもつまらなくなるだけなのは目に見えている。それに多くの人にとってはヒロインのエロさやイチャイチャの方が大事なので、こんなところに注目している僕の方がおかしい。だけど僕にとってはそこの部分がアニメを見て、加えてラノベ版も読んだ時に得られる違いであり、注目したい部分だった。
 
 
 
 
 
 
 

最後に

とうとう次で12巻、やっと追いついたか……
 
 
さすがに毎回毎回感想を書いていると、この作品の魅力っていうのがなんとなく整理できてきた気がした。というか今までがどれだけ軽く読み流してきたんだよって思っていた。
 
 
 
 
12巻をAmazonで頼みます。
 
 
 
なんか最近、本はAmazonでしか買っていません。
 
 
 
書店で買うよりポイントの還元率がいいし、品揃えもいいので、かなりオススメです。僕の方法は、まず書店でどんな本があるかサーチして、Amazonのレビューを確かめて、購入を決める。そんな感じです。
 
 
 
よければやってみて下さい。
 
 
 
それではー