1518 イチゴーイチハチ 1,2巻 (2015) 感想 「挫折の果てに行き着く先は」
評価:★★★★☆(星4つ)
「GUNSLINGER GIRL」の相田裕さんの作品。とある高校の生徒会を舞台とした話。
怪我で野球を挫折した少年とそこまでやりたいことがない少女が生徒会に入る。夢から破れた人がその後どうするか、といった内容が中心となっていた。
ご存知の通りラノベやアニメでは、生徒会はよく分からないくらい権力を持っている。先生以上に学校を支配しているので、もはや学生だけで好き放題やっている状態。もはや生徒会(笑)。
そこから考えるとこの生徒会は、生徒会と言うより会社に近い。意見を集め、生徒会で話しあって、学校に意見を提示する。生徒会の意見を通すために、生徒たちの活動を促したりなど、ここだけ聞くとものすごい地味な活動をしている。
他の高校は知らないけれど、少なくとも僕の高校では生徒会は先生の言いなりだった。なので、この生徒会の活動の自主性には少し驚いた。僕やその他の高校がおかしいだけで、これが本来あるべき生徒会の姿なのだろう。
この作品で特筆するべきところは、間違いなく「主人公になれなかった人たち」に焦点を当てた物語であるところ。似たような分類では「灰と幻想のグリムガル」「この素晴らしい世界に祝福を!」などが思いついた。
もちろん内容が似ているという意味ではなく、主人公が主人公らしい立場でないという点が似ている。アニメに例えれば、ガンダムの乗れない人たちは何をしているの? といった感じだった。
誰もがめざましい活躍をあげられるわけではなくて、誰かが輝く一方でそこに至れない人もたくさん存在する。じゃあそんな人はどんな風にしたらいいんだろうっていう疑問を真摯に描いていた。
すごく地味なんだけど、すごく響いてくる作品。爆発的ヒットにはならなそうだけど、僕はすごく好きです。アニメにする時はノイタミナでお願いします。
1~3話まで公開されています。未読の方はどうぞ
そんな感じで以下ネタバレ入りの感想
挫折の果てに行き着く先
会長や烏谷くん、丸山さんなど、ある意味主人公とはいえない人々が揃っている。前者2人はスポーツに挫折し、丸山さんはそもそもそれほどやりたいというものに出会っていない。さっきも言ったけど、主人公ではない人たちに焦点を当てた物語になっていた。
もうね、とにかく周りの人が優しいんですよね。なんでこんなに優しいのかってくらい優しいんですよ。一番優しいのは会長で、会長自身も野球に挫折して、何かしらで乗り越えたからこそ、同じ境遇にある烏谷くんの気持ちがわかる。
他にも楽しいことがいっぱいあるって教えてやりたいんだよ。
たぶんこれに会長の全ての気持ちが詰まっている。1巻では烏谷くんが野球を諦めるまでの物語。1巻でどんだけ過酷な選択してるんだよ。おそらく上記のセリフが挫折に対する作者のアンサーがこれなのではないのでしょうか。
この先、野球とは違う楽しさが…きっとあるよ!
丸山さんが橋の上で、言えなかったセリフが1巻のラストで言えた時には少しジーンときた。生徒会の活動を一通り体感して、烏谷くんの人となりを知って、会長から挫折の辛さを聞いた。だからこそ烏谷くんが野球を諦めるって言った瞬間に、以前言えなかった丸山さんなりのフォローを自信を持ってできたのでしょうね。
最後に
丸山さんも目標が持ててよかったです。彼女がどう成長していくのかが楽しみです。もちろん烏谷くんが次の夢をどのように見つけていくのかと言う部分にも注目です。
それではー