ソラノヲト (2010) 感想「非日常がすぐそこにある日常」

評価：★★★★☆(星4つ)

戦争を描く物語はたくさんあるけど、戦争の後方の話は少ない。それも当たり前で物語を展開させる以上、その中心となる舞台に主人公がいるのはある意味当然。物語を動かす存在が主人公であるとすれば、舞台に主人公が立たなければ物語は動かない。

そんな感じで、今回の主人公は戦場へ行かない。行かないからこそ世界全体に関わることにはほぼ関与しない。衝撃的なことは起こらないけれども、世界の空気だけはひしひしと感じられる。あぁ、もう終わっているんだなぁという雰囲気が常時漂っている。世界の傍観者としての立場を視聴者側も共有しながら進んでいくアニメになっていた。

コンセプトというか、雰囲気はけものフレンズに近いものがある。というかソラノヲトの後の世界がけものフレンズでもいけるんじゃないのかな。人類の痕跡があるけども、それがわかる人間はもういない。そんな雰囲気が共通していた。

以下ネタバレを含む感想

終わっている世界とはどんな世界か

世界観的なことは一切明かされない。匂わせる程度に止まっている。世界の現状が出てくるのは7話。僕も7話はかなり衝撃を受けた。ご飯を食べながら見ていたけど、気がついたら手が止まって口を開けて見ていた。

どう考えてもこの世界の希望が見えない。最終話で平和の兆しは見えたみたいだけど、そもそも世界の状況とかは何もわからないのでなんとも言えない。海がなくなったとか、もう解読できない文字があるとか、よくわからない技術の代物があるとか、この状況から見れば、世界はもう終わりに向かっているのは確かだろう。

こうして考えると、技術が失われるのって一瞬なのかなと思います。理系の大学行った人ならわかると思うのですけど、今まで紡いできた技術を元にして新しい科学が生まれる。わかりやすく単純に言えば先行研究ってやつですね。限られた人しかわからない技術が失われてしまうと、もう一回発明の過程を辿らないといけない。これをやってしまった時点で、人類は後退を始めたことになってしまう。

車輪の再発明ではないけれども、発明の過程を繰り返すというニュアンスでは同じ。ソラノヲトの世界ではこれが起こってしまっている。だからもう終わりが始まっていると言える。アニメの最後から人類が再興するのか、衰退するのかはわからない。現実の世界でこれはまだほとんど起こってないけれども、技術の進歩が常に当たり前のものではないんだなと感じずにはいられなかった。

d.hatena.ne.jp

タケミカヅチがかっこいい

かわいい女の子とハイテクロボってめちゃめちゃギャップと違和感があった。けど12話のタケミカヅチが動いているシーンはかっこよすぎた。12話分のためていただけあってガシガシ動いているのは、かなたたちの背景も合わさってすごい良かった。圧倒的不利な状況の中で「それでも」と戦っている姿はいいですね。

鉄血のオルフェンズの最終話を思い出した。単体では強くてもやっぱり数には敵わない。だけど、それでもなんとか動き続ける。現実にはありえないけど。機械が人の思いを反映して動き続けるっていうシーンはくるものがありました。僕はロボアニメは好きなので、タケミカヅチのおかげでより一層この作品が好きになりました。

最後に

戦場の後方を描くアニメは少ないので、それだけでもこのアニメはおすすめに値する作品。女の子たちがイチャイチャするアニメはあまり好きではないけれども、この作品では世界の荒廃さとのいいギャップになっている。まぁ女の子しかいないのは若干違和感があったけど。そこはマーケティング的にしょうがないだろう。男がいるより、女の子の方がビジュアル的に生える。

展開がちょっと微妙な部分も多々あったけど(最後の3話が急ぎすぎとか、敵兵を見つけて報告しないのは幾ら何でもどうなんだとか)、世界の終わりに浸れるいいアニメでした。

それではー