物語の思考法

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硫黄島からの手紙 Letters from Iwo Jima (2006) 感想 「父親たちの星条旗も合わせて見てみよう」

硫黄島からの手紙

評価:★★★★☆(星4つ)
 
第二次世界対戦の激戦地の一つである硫黄島の戦いを描いた映画。監督が日本人ではなく、アメリカ人のクリント・イーストウッド監督なことも特徴の一つ。監督が外国人にも関わらず、しっかり日本映画っぽさが出ていたのはとても驚いた。おそらく何も知らなければ、日本映画だと思っていたはず。
 
 
 
 
この作品では戦争の悲しさや虚しさ、恐ろしさはもちろん描かれている。だけど、戦争の悲劇を知りたいのならわざわざこの映画である必要はない。父親たちの星条旗」を合わせて見ることこそが、この作品の鑑賞の仕方となる。
 
 

父親たちの星条旗(字幕版)

 
 
同じ舞台を2つの方向から描いた映画は、この映画が初らしい。日本からの視点、アメリカからの視点から戦争を見ることによって両軍の兵士が何を思って戦っていたのか、それが理解できる。片方だけ見ても、よくある戦争映画で終わってしまう。是非とも2作品を見ることをお勧めしたい。
 
 

 

 
 
 

硫黄島の戦いの悲惨さ 戦争の虚しさ

前述の通り、戦争の怖さ、恐ろしさはこの作品だけの感想ではない。だけど、改めて戦争って恐ろしいなぁと感じた。完全に小並感ですね。
 
 
 
だってあの銃弾がバンバン飛び交って、爆弾もめちゃくちゃ降ってくる状況ではどんなに訓練しても、死ぬときは死ぬでしょ。頑張ったから死なないとかそういうものじゃない。偶然に左右される部分が多すぎる。そう考えると兵士の人たちはただの戦局を動かす駒でしか無い。そんな状況だと思うとますます虚しくなってきた。
 
 
 
 
戦争はしたくない、一兵士にはなりたくないなぁと心から思えた。
 
 
 
 
 

戦う兵士の心情は敵も味方も同じ

中盤あたり、敵の情報を得るためにアメリカ兵を捕虜とする。数少ない医薬品でアメリカ兵を治療して、尋問を開始する。どのくらい情報を聞き出したかどうかはわからなかったが、その後捕虜は傷が深かったようで気がついた時には死んでいた。その兵士が肌身はなさず持っていた手紙を西中佐が読み、アメリカ兵士側の心情を日本兵が知ることになる。
 
 
 
よくできたお話のようだけど、これは事実みたいですね。wikipediaで見ただけですけど。相手が自分たちと全く同じ思いを持って戦っていたとわかった兵士たちはその後何を思って戦ったのでしょうね。鬼畜米英とか言って相手を蔑んでいた方がまだ戦いやすかったんじゃないのかな…… 
 
 
 
 
父親たちの星条旗を見ると、これと同じことがよくわかる。アメリカ側も別に日本が憎くて戦っていたわけじゃなく、戦争だから、仲間が殺されそうだから戦っただけ。「ジャップ死すべし!!」みたいなことは描かれていない。文章にするのは簡単だけど、映画を見るとよくわかる。
 
 
 
 
途中でアメリカ軍が投降した日本軍の捕虜を殺害するシーンがあるけど、あれも捕虜がめんどくさかっただけで日本人が憎いわけではないように思えた。たとえ憎いと思っていたとしても、殺し合いの最中だからぶっ殺したくて仕方がない人がいてもしょうがない気はする。
 
 
 
 
 

栗林中将の戦略

万歳アタックとか、現代から考えれば狂気としか思えない。ガルパンではある学校の戦略として突撃がネタになっていたが、今回の映画では全く笑えなかった。チハがでたときは少しニヤっとしたけどね。
 
ガールズ&パンツァー 劇場版(セル版)
 
 
歴史は小中高で習った程度の知識しかないが、そこから考えても、少なくとも映画で見た範囲での日本軍の戦略は感情論が先行して、合理性からかけ離れている。
 
 
 
栗林中将はアメリカの国力の凄さを身を持って知っていたことが、合理的な判断を産んだ。硫黄島からの手紙は大体史実に沿っているので映画の内容は概ね事実と捉えて大丈夫なはず。そこから考えればまさに「敵を知り己を知れば百戦危うからず」ということだった。
 
 
 
何も知らないというのは非常に恐ろしい。合理的な判断は幅広い知識から生まれるのだなぁと感心した。
 
 
 
 
映画を見た後にwikipediaを見ると、映画の流れがさらに理解できます。なるほどーと思えるので、そこそこおすすめ。
 
 
 
 

最後に

戦争が悲しい・虚しいことだということは、他の多くの作品で描かれている。それに見知らぬ誰かをぶん殴り続けて快感を得るのは難しいし、何より虚しいのは、普通に生きていればわかるはず。なのでこの映画を見て本当に考えるべき点は「悲しい」ということではない。
 
 
 
僕が思ったことは、何より「知識が足りない」ということだった。
 
 
 
第二次世界大戦については教科書以外にもいろいろ聞いたことがある。陸軍と海軍が仲が悪かった、帝国軍は現場が優秀でトップがダメだった、第二次世界大戦ははじめは日本が優勢だったなど。だけど総合的に見れば、しっかりと語れるほど歴史について知らないことがたくさんある。
 
 
 
繰り返すが、作品を通して戦争の虚しさや激しさを伝える作品は数え切れないほど多くある。だけど、そこでただ「悲しい」「怖い」「恐ろしい」とかで終わらせるのではなく、なぜその悲しい背景に至ったか、ということであるはず。
 
 
 
  • 第二次世界大戦がありました。
  • 日本が戦争をしたせいで多くの人が死にました。
  • だからもう戦争をしないようにしましょう。
 
 
 
小中高の第二次世界大戦に関する内容はこれくらいしか覚えていない。僕の周りでも戦争に至った経緯について明確に理解している人は少ないように思える。歴史の教科書は事実や名詞はたくさん詰め込まれているけど、そこに至った経緯までは記されていない。だから僕は学校の歴史はつまらないと思ってそれ以上調べることはしなかった。昨今、歴史から用語を少なくしようという動きがあるけど、その通りだと思う。
 
 

 

 

 

だけど減らすべきではない。理由は単純。用語を減らしても、勉強しない人が大半なのでより知識がない人が増えるだけ。それに先生の方もそれほど頭がよくないはずなので、用語を減らしても歴史的な背景を教えきれないでしょうね。

 

 

 

話がそれましたね。まぁつまり、確かに映画を見て悲しかったし、戦場に立つ一兵士になりたくないとは強く思った。それ以上に自分の知識のなさを痛感した。このまま知識がないままでいたら、合理的な判断ができなくなる。誰かの考えや判断に左右されるだけの存在になってしまう危うさを感じた。そのため今度は歴史系の本に少しずつ手を出していこうと思った。

 
 
 
そんな感じで、まずはこの記事が映画で描かれた情報が簡単にまとまっていて面白かった。
 
 
 
今回はここまで。重ねて「父親たちの星条旗」も合わせて見ることをお勧めします。
2017年12月現在ではPrimeビデオで無料でした。
 
 
それではー
 
 

 

硫黄島からの手紙

硫黄島からの手紙