物語の思考法

~2次元と3次元をつなぎたい~

冴えない彼女の育てかた GirlsSide2 (2016) 感想「キャラクターの1人1人の裏側と成長」

冴えない彼女の育てかた Girls Side 2 (富士見ファンタジア文庫)

評価:★★★★☆(星4つ)
 
 
GIrlsSideの2巻目。外伝と言いつつ、ちゃっかり本編でかなり重要な展開を見せる外伝(仮)な本の第2巻。表紙も加藤じゃありません。FDに続いて全然別の違う人でした。
 
 
 
皮肉はここまでとして、内容的にはとても良かったです。加藤と英梨々の仲直りイベントはもちろん、メインキャラクターほぼ全員に注目が当てられて、さえかのの世界をさらに広げる一冊になっていた。倫也くんは登場しないので、過剰なイチャイチャは出てこない。なのである意味真面目は女同士の交流が展開されていた。
 
 
 
やや気になるところもあったけど、それは後半で述べたいと思います。
 
 

 

 
 
 
 

物語の厚みが増す

加藤と英梨々がどうやって仲直りをしたのか、詩羽先輩と美智留がなぜ仲が深まっていたのか、本編を読んでいる時にあれ?と思っていた部分の補足となっていた。他にも出海ちゃんや紅坂さんやほとんど出番がないicytailの人たちとか、GirlsSideに恥じない内容となっていた。
 
 
 
前回ってGirlsSideと言いつつ詩羽先輩と英梨々しか出てこなかった。そこから考えれば、今回のGirlsSideはより他のキャラクターたちに幅広く注目していたので、さえかのの厚みが一層高まっていた。本編がどうしても倫也くんの一人称だから、物語の視点が定まってしまう。だからこそこういう外伝はとても良かったです。
 
 
 
 
けど、読むタイミングがよく分からないので11巻まで読んだ後に読んだ。9巻から10巻に入っていきなり加藤と英梨々が仲良くなっているのは少し拍子抜けした。物語は倫也くんの1人称視点だからしょうがないといえばしょうがないのだけど、本編に関わる重要な展開だと思うので、そこはちゃんと本編に入れて欲しかった。
 
 
 
……と書いたけど、あとがきによると上記の指摘については作者も気がついているようだった。作者なりのこだわりらしい。
 
 
 
 
まあ最終的には僕がググレカスって話なんだけども。
 
 
 
 
 
 
 

英梨々の覚悟

 
本編では流されていた加藤と英梨々の仲直りの過程。僕もすごく気になっていたところだった。
 
 
 
加藤は英梨々がサークルを抜けてクリエイターの道を歩み始めたことについては良くても、倫也くんが傷ついたことに納得していない。そんな加藤にどう接したらいいか分からない英梨々。加藤は9巻で倫也くんのシナリオを読むことによって倫也くんの気持ちを理解して、英梨々と話そうと決意する。そしたら10巻で仲良くなっているものだから少し焦った。
 
 
 
「あんなの仲直りじゃないよ。英梨々の決心を、倫也くんが一方的に認めただけ」
 
 
「っ……」
 
 
「今、二人の関係が元通りに見えるのは、倫也くんが、英梨々の信者だからだよ」

 

 
 
これに加藤が英梨々を許せなかった意味が詰まっていた。これは結構しっくりきた。英梨々を一方的に認めただけで、英梨々が倫也くんにしたことは特にない。むしろ傷つけただけなのがわだかまりの原因になっていた。サークルが好きだったからこそ、それを壊したことに納得がいかない。
 
 
 
「そんな自分のもっと上に何があるのか、誰がいるのかも見えてきた。だから、その上を目指そうって思えるようになった」
 
 
 
「あたし、追い込まれないと戦えない。甘えがあったら前に進めない」
 
 
 
けれど、改めて英梨々の意思を聞くことで、英梨々が倫也くんを傷つけて、サークルをぶち壊してまで次のステージに上がった理由に納得が言ったってことなのかな。英梨々の覚悟や意志が感じられるシーンだった。
 
 
 
 
 
英梨々以外の部分では、1つは伊織の活躍。本編だと、倫也くんとシナリオ談義しているとこしか登場しない。なので、icytailのマネージャーをやったり、出海ちゃんを同人イベントに出したりして、着実に販促のために行動をしているのを見ると、ちゃんと仕事してるんだなぁと、伊織のさりげない活躍が良かったです。
 
 
 
 
あとは出海ちゃんかなぁ。本編だとどうしても加藤・英梨々・詩羽先輩が中心になって、出海ちゃんと美智留はおまけ扱いになってしまっている。作画で迷っているシーンはあったけど、具体的な葛藤や解決はさらっと流されてしまっていた。だからこそ、イベントに出て、他の絵師から褒められることによって自己を確立していく姿はしみじみとした。
 
 
 
 
 
 

人称が気になる。誰の視点なんだろうね

人称が気になった。語り手は倫也くんってことだったのかな。GirlsSide1の時と文体が少し違った印象を受けた。1の方ではおそらく詩羽先輩の視点に近い3人称視点だった。僕は3人称視点が客観的に読めるので好きだから、より感情移入ができた。けど今回は女の子しか登場してないのに、倫也くん視点での文体があとを引いていて、若干感情移入がしづらかった。
 
 
 

冴えない彼女の育てかた Girls Side (富士見ファンタジア文庫)

 
 
 
今回は前巻と違ってギャグが多いので、3人称にするとギャグの文体が薄まるし、表現しにくくなる。なので、それぞれの章ごとに誰の視点なのかをはっきりして欲しかった。
 
 
 
 
 
 
  

最後に

キャラクターのイチャイチャには興味がないけれども、こういうキャラクターの成長や感情を吐き出すシーンはすごく好きです。悩んだ末に出した答えっていうのは2次元でも3次元でもくるものがある。あとがきにあるように『ヒロインたちが、倫也のいないところで、自らの意思で、悩み、決断して前に進んでいく』話だった。
 
 
 
でも結局、明確にどれが正解でどれが不正解だなんてものはなかった。
 
 
出海がずっと追い求めていたものに、大した意味なんかなかった。
 
 
いや、そうじゃなく……
 
 
出海が、そうやって必死に試行錯誤して、自分なりの結論に辿り着き、前に進む力を得ることこそが、兄の求めていたことだったようで。

 

 
 
 
何が正解か分からない以上、自分なりの答えを出すことが大事。上の文にはそれが詰まっていた。ここら辺がマブラヴの要素があっていい。クーデター編の武の葛藤が思い出された。
 
 

マブラヴ オルタネイティヴ - PS Vita

 
 
マブラヴはとても良い作品なので、知らない人はいつかやって見るといいですよ。同じエロゲーの分野ですから、さえかのを読んで本物が気になる人はぜひどうぞ。
 
 
 
 
次は12巻行きます。やっと追いついた……
 
 
 
それではー