物語の思考法

~2次元と3次元をつなぎたい~

1Q84 book1 <4月-6月> 前編 (2010) 感想 「ラノベの後に読むと表現と文章の落差がものすごい」

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)

評価:★★★★☆(星4つ)
 
 
 
村上春樹の小説。有名どころのうちの1つ……な気がする一冊。おそらく紹介はいらないし、知りたい人は僕の文章にたどり着く前にいろんな記事があるはず。なので、今回は自由に書く。そもそも文章書くのも久しぶりで、色々考えるのが面倒だという理由もあるけどね。
 
 
 
 
そもそも僕は文学作品はあまり読まない。僕の前の記事や人気記事ランキングを見ればわかる通り、基本的にアニメ、ゲーム、漫画、ラノベとオタクなラインナップとなっている。なので、当然のように村上春樹も全く読んだことがなかった。そもそも文学ってなんだ? という疑問はあるけど、一番文学に近いもので村上龍の「5分後の世界」や伊藤計劃の「虐殺器官」「ハーモニー」くらい。
 

 

 

五分後の世界 (幻冬舎文庫)

 

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

 
 
小説はSFチックなものやラノベっぽいものしか読まない。1Q84は昔の自分がちょっと背伸びして、いつの日か読むだろうとブックオフで購入した記憶がある。多分1年くらい眠っていた。「冴えない彼女の育てかた」に若干の飽きを感じ、文学チックなものでも読むかと決断。1Q84捜索後に読書開始。
 
 
 
 
前に読んでいたライトノベル

冴えない彼女の育てかた Girls Side 3 (富士見ファンタジア文庫)

 
 
 
 
以降、気づいたところ、気になった部分を書いていく。
 
 
 
 

展開の速さが全然違う

前に「冴えない彼女の育てかた」を読んでいたせいか、文章の密度と話の展開のスピードの落差にびっくりした。
 
 
 
 
まずは話の展開について。ライトノベルは1冊で起承転結が示されていることが多い。ソードアートオンラインとか1巻でアインクラッドが終了しているし、涼宮ハルヒの憂鬱も話の根幹は全て出揃っている(僕は涼宮ハルヒはアニメ1クール見たが、本は憂鬱しか読んでない)
 
 
 

ソードアート・オンライン1 アインクラッド (電撃文庫)

 
 
 
だけど今回の1Q84を読んでびっくり。
半分読んでも何の話かさっぱりわからねぇ!!!
 
 
 
 
暗殺者の青豆と小説家志望で「空気さなぎ」を書き直すために奮闘する天吾の2人が登場する。だけど両者の話がバラバラで繋がりが全く見出せなかった。だけどつまらないかといえばそうではなかった。
 
 
 
 
 

 文章の密度が全然違う

ここで文章の密度の話になるけど、青豆と天吾の心情や過去を細かすぎるほどに描写しているからまるでそこにその人がいるような感覚が常にあった。青豆でいうと、バーの空間にいるだけ何だけど、その空間から青豆が感じた心情がしっかり書かれている。それに中年のおじさんの好みやふと過去を思い出したりする。まるで本当の人間が日常で感じることをわかりやすく提示されている感覚だった。青豆が感じている世界がそこにはあった。
 
 
 
 
あと、唐突にエロい描写が出てくるのは村上春樹ではお決まりなんですかね。いきなり「おちんちん」とか出てきて本当に焦った。よーく考えればあさのあつこの「No.6」を読んだ時も、急にヒロインが「sexしたい」とか言い出してたし、伊藤計劃の「ハーモニー」でも急に性を彷彿とさせる描写があった気がする。ラノベ以外では性というものが一般的に描かれるものなのかな。
 
 
 

NO.6〔ナンバーシックス〕 #1 (講談社文庫)

 
 
 
 
話が逸れた。だけどそんな感じで最後まで読むとちょっとしたつながりが見えてきた。青豆は異世界転生とは行かないけど,、1984年から1Q84と名付けた別の世界に飛んでいた。まさに世界線以外の何物でも無いよね、これ。1Q84シュタインズゲートだったのか。
 
 
 

STEINS;GATE

 
 
 
天吾の親が起こした事件とふかえりの親が関わる事件の2つが青豆の世界では発生していない。どうやらこれが世界線の違いに大きく関わるようだ…というところで話は終了していた。序章の序章って感じだった。
 
 
 
 
 
だけど前述の通り一般的なラノベより風景や心情の描写が細かいため、その人が何をどう考えて、どういう過去を背負っているのかを紐解いていきながら物語を追っていけた。なので満足度は高い。密度的にいえばエロゲーの文章の密度に似ているように感じた。その人の視点に立って、主人公の視点から状況を追って、過去を思い出して、前へ進んでいく。そんな感じがした。
 
 
 
 
冴えない彼女の育てかたは電車の往復3時間くらいで軽く読めた。だけど1Q84は密度が濃くて疲れるし、展開も遅いため10日くらいかかった。だけどいろいろ考えながら読み進められたから、とても面白かった。
 
 
 
 
 

最後に

1Q84は挿絵はない、萌え的な描写もない。展開は遅い、文章は濃いし疲れる。だけど濃密な文章が詰まっていた。
 
 
 
いろいろライトノベルの文句言ったけどラノベにはラノベのいいところがある。
 
 
 
挿絵があるし、可愛いキャラが多い、展開は1冊で完結するし、文章は会話だけ追っていればおおよそ把握できる。気軽に読むにはもってこいの小説だ。
 
 
 
もちろん内容が濃いものもたくさんある。ソードアートオンラインは表現が細かい。僕はファントムバレッド編が一番好きです。シノンの銃を撃つシーンやトラウマの葛藤とかすごい感情移入していた。アニメ化前にも何度も読み直して世界を想像していたし、アニメで想像通りの世界があってとても満足していた。
 
 
 
それにもはやどこらへんが「ライト」なのかが全くわからない小説もあるし。
 
 
 
 
1.  そもそも「ライトノベル」なのかがわからない

化物語(上) <物語> (講談社BOX)

 
 
 
 
 
2. 厚さが「ライト」ではない

GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン (1)上 (電撃文庫)

 
 
 
 
3. 内容が「ライト」ではない

シュヴァルツェスマーケン 1 神亡き屍戚の大地に (ファミ通文庫)

 
 
 
1Q84はいい意味でラノベとの違いが顕著で楽しかった。暇を見つけて続きをゆるりと読んでいきたい一冊だった。
 
 
 
次はこれですね。忘れないようにしないと。
 

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉後編 (新潮文庫)

 
 
 
 
 
それではー
 

 

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)

1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)