Fate/stay night Unlimited Blade Works (2014,2015) 感想 「傷つくのが運命だとしても」
評価:★★★★★(星5つ)
Fate/stay nightの3つの話のうちの2つ目、Unlimited Blade Worksをアニメ化したもの。圧倒的な作画の綺麗さによる戦闘シーンの破壊力ももちろんすごい。だけど一番の魅力は士郎の肉体的、精神的な成長だった。
聖杯戦争を通して「正義の味方になる」自分の理想を遂げるために、次々と成長を見せる士郎がかっこいい。個人的には最初はセイバーの足手まといでしかなかった士郎。だけどサーヴァントや魔術師との戦いを通して、自分の理想を叶えるために強くなっていく。そして「ある人」との対立によって、自分の信じた正義に疑問を持ってしまう。
最終的に苦難を乗り越えた後の士郎が戦う姿はただひたすらにかっこいい。士郎がという人間のあらゆる成長が網羅された、そしてufotableの最高級の作画を通してサーヴァントどうしの圧倒的な戦いを見ることができる最高のアニメだった。
以下ネタバレありの感想。
Fateの世界の紹介 1~13話
1~13話はFateの世界観や士郎の歪みなどが提示される。物語の本番としては2クール目からなので、1クール目はサーヴァントの戦いに注目しながら楽しめた。
おそらく、1回見ただけでは1クール目は半分くらいしかわからない。最後まで見てからもう一回前半を見直すと、色々再発見できるものがある。例えばアーチャーと士郎の共通点がさりげなく描写されているところとかね。1話でアーチャーが口パクなのは「トレース・オン」って言ってるところからとか、遠坂がアーチャーの過去を見ているシーンとか。繰り返し見て面白いというアニメは名作。Blue-rayもそりゃ売れるわけだ。
未来の自分との対決 14~25話
2クール目でダレるアニメはたくさんあるけど、UBWは2期こそが本番。エミヤと士郎、士郎とギルガメッシュとの戦いが素晴らしい。士郎が自分の理想を遂げるために、未来の自分自身との戦いを通して自分の願いを再確認する物語だった。
正義の味方になるとは具体的にどういうことなのか、エミヤという存在と対立することによって、その理想の意義や大きさを見せつけられる。そこに至るための困難さと至った果てを教えられる。それでも正義の味方になりたいのか、士郎の覚悟が試された。
多くの人を助けるために、少数の人を殺し続ける。その矛盾に押しつぶされた果てエミヤが至った結論が、過去の自分である士郎を殺すこと。エミヤは正義の味方になりたいと願い、その理想を遂げた。だが、至った理想の果てにエミヤは絶望してしまった。
エミヤがいうことは士郎がこれからたどる未来であり、正義の味方を目指す以上、いずれ自分がたどる道でもある。だからこそ、士郎もエミヤが語る未来に動揺してしまった。でも自分の願いの根底、つまり自分の願いは切嗣から得た偽物の思いだったとしても、誰かを助けたいという思い自体は決して間違いではないと確信する。未来の自分を見ても決して夢を諦めない姿にエミヤは負けを認める。
挿入歌「LAST STARDUST」がありえないくらい士郎とエミヤのシーンに合っている。
傷つくのが運命(さだめ)だとしても 心はまだ彩(いろ)を放つ
未来を知ったとしても、それでも理想を求め続ける士郎の心がよくわかる。
それにBrave shineではなく、LAST STARDUSTが主題歌の候補だったというのも頷ける。
士郎が××する時に入る挿入歌はOPソング『Brave Shine』同様、Aimerさん側の手によるものです。
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自分の理想の原点を見せつけられたことによってエミヤの中でこれからも生きていく理由ができて、今の自分を受け入れられた。最後の笑顔、「これから頑張っていくから」や「オレは間違えてなどいなかったーー」というシーンからエミヤの考えの変化が見えて最高にクール。
借り物の、偽物の思いだったとして、エミヤの戦いを通して自分の思いを貫いていく覚悟があった。偽物が本物に敵わない通りはない。偽物であったとしても間違いではない。だからこそ本物を重視するギルガメッシュに対して、偽物の思いであってもその信念を貫き通す士郎の思いが見えてかっこよく見えた。
サピエンス全史(下)によると、予想された未来に対する結果は2種類あるそうだ。1つは予想によって変わらない未来(1次のカオス)。天気予報などがこれに当たる。天気を予想したところで、雲を消し去るとかしない限り、次の日の天気は変更されない。つまり予想を知ったところで人間の行動によって未来は変わらない。
2つ目は予想によって変わる未来(2次のカオス)。株価などがこれに当たる。株価を予想してもその予想に反応して行動するため、予想された未来が訪れる保証はない。
今回のエミヤの件は2次のカオスに合致している。予想された未来を士郎は知った。未来を知った上で行動するわけだから、エミヤと同じ結末に至るかどうかは士郎の行動次第。全く違う未来ではないけれども、エミヤとはちょっと違う未来にたどり着ける可能性が生まれた。
あなたは同じ道、同じ方向を目指すでしょう。だけど、どこまでいけるかは違うかもしれない。大事なのはどこにたどり着くか、どこまで行けたかでしょ。たどり着く場所、結果は同じになったとしても、その後もっと先に歩いて行けたとしたのなら、きっとあなたは正しい最後を迎えるわ。25話 遠坂凛
歴史を学ぶ意義は未来を知るためではなく、視野を拡げること。今の現実は必然的なものではなく、自分が考えるより多くの可能性があることを知るためだそうだ。そういう意味では士郎の視野は広がったと言える。
最終話でかつてのエミヤのような行動を見せているシーンがあったけど、これからどうなっていくかまではわからない。だけどそんなのはどうでもいいのかもしれない。
未来を見て自分を見つめ直した士郎
過去を見て自分の原点に帰ったエミヤ
それぞれが戦いを通して得たものがあって、それぞれが一歩ずつ成長した。きっと二人のエミヤの未来は以前よりもちょっといいものになったはずだしね。
最後に
士郎が三流魔術師から最終的にサーヴァントに対しても戦えるようになるのはめちゃめちゃかっこいい。昨今1話から最強なキャラクターが多いけど、僕はザコから強者へと至る姿が辿れる物語は大好き。努力の過程があるからこそ、主人公に対しても思い入れが強くなる。
最初はランサー、ライダー、キャスター、バーサーカーにボコボコにされてた。なのに葛木先生やエミヤとだんだんとまともに戦えるようになっていって、最後にはギルガメッシュと正面から撃ち合う。成長がまざまざと見て取れて本当に良い。
こうなると、Fateルート、Fate/Zero、Heaven's Feelもものすごく気になる。HFは次回の公開を待つとして、とりあえずZeroをもう一回見る。昔は1期でやめちゃったからなぁ。Fateルートも気になるけどDeenの作画はめちゃめちゃ違和感がある。Fateルートは無料でできるみたいだからゲームでやろうかな。
そしてFGOのエミヤに聖杯を使ってあげたくなった。
それではー
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