物語の思考法

~2次元と3次元をつなぎたい~

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? (2017 映画) 感想 「もしもを願う心が作り出す未来」

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? (角川文庫)

評価:★★★★☆(星4つ)
 
 
打ち上げ花火(以下略)を映画館で見た。ネットでは酷評ばかりだけど、そこまでダメと言われるほど悪い作品ではなかった。作画も綺麗で、主人公が学生の男の子と女の子、そして公開時期が夏ということでどうしても君の名はを思い出してしまうのも仕方がないのかもしれない。なので、この映画を見るときには、君の名はとは別のものなのだと割り切ることが大事になってくる。僕もネタバレなしの評判は聞いていたので、そのように思って見に行った。
 
 
 
そう割り切った上で見ると、かなり丁寧に作られた作品だった。
 
 

 

 
雰囲気がいい。田舎の夏の風景が綺麗に描写されていた。プールやスプリンクラー、海の水に関する風景がとてもよかった。
 
 
 
声優も(主役以外)いい。脇役まで超有名な声優で占められていたため(主役以外)とても自然に(主役以外)聞き入っていられた。主役に関しては完全に政治的なプロモーションですね。一般層の客を取り込もうとしたのはいいけど、ちょっとあからさますぎるかな。ちなみに主役もちゃんとした声優だったらもうちょっと集中して見れた。そんな意味では★4.5だったかもしれない。
 
 
 
 
なずなはエロい。ワンピースも制服も水着もいちいちエロいです。アングルもなかなかイカしていて、映画館で発情してました。
 

瑠璃色の地球

 
 
ストーリーに関しては前述の通り、君の名はと違うものだと割り切ることが大事。その上で、典道の後悔から始まるループものとアニメに嗜む人ならば戸惑うことのない構成となっていた。
 
 
 
君の名はとは違うと割り切って、綺麗な風景と人物からなる物語の雰囲気に飲み込まれつつ、ストーリーを楽しんでいく映画でした。
 
 
 
 
以下ネタバレを含む感想。
 
 
 
 
 
 
 

 物語を通してなずなの問題はどう整理がついたのか

物語はとても丁寧にできている。なずなは母親の再婚で町を出て行く。けれども母親の再婚はこれで3回目なので嫌気がさしている。ふと海で謎の玉を拾ったことをきっかけに町を出る日に家出(=駆け落ち)をすることにした。容姿も振る舞いも格好もとてもエロいです。なのでなずなの動機は本人も言っていたように、連れて行かれる前に1日でもいいからどこかへ飛び出すこと。
 
 
 
 
一方、主人公側はおそらくなずなを好きな男の子典道。街を出て行こうとするなずなが親に連れて行かれているのを見て、何もできないことを後悔して、なずなの玉をきっかけにループを始める。典道の動機(なずなを助けた理由)は好きだからでカタがつく。自分が好きな女の子で、しかもかわいい子に助けを求められたら、断る理由は存在しない。それが男の本能であり、最大級の動機。
 
 
 
ということを踏まえれば、この物語の問題は「物語を通してなずなの問題はどのように整理がついたのか・解決したのか」に当たる。中学生という年齢を考えれば、親を切り離して生きて行くことは難しいし、それは本人も自覚していた。なので親の再婚に対して、なずなの中でどう整理がついたのかが重要。
 
 
 
 
典道の成長としてはなずなを好きかどうか微妙な状態から、好きだと自覚した様子が見られたので、それで解決。なので特に疑問に思っていないです。
 
 
 
 
ループを繰り返して駆け落ちを成功させていき、最終的には学校になずなと典道の姿はなかった。そこから最終的に2人は駆け落ちをしたと思われる。
 
 
 
 
もしもあのときこうしていれば…を繰り返して、自分の理想の未来をつくっていく。そんなとこから僕的には、「もしもを願う心が未来を作り出す物語」だと解釈した。ifとかいっぱいあったし。典道となずなはもしもを繰り返して、駆け落ちを成功させた(仮)。
 
 
 
 
その後がどうなったかはよく分からない。現実的には中学生2人で生きて行くのは難しいだろとか考えてしまうが、それを気にしてもしょうがないだろう。もしかしたら、あの世界はまだもしもの世界なのかもしれない。なんともはっきり言い表せないようなラストになっている。これも君の名はの綺麗な終わり方と比較してしまうと酷評される要因になっているのかもね。
 
 
 
 
まとめれば、なずなの問題がどう解決したかという部分はよく分からなかった。どう自分の問題に向き合っていったのか。そこの部分が分からなかった。典道と一緒にいれば大丈夫。そんな感じだったのかな。そもそもなんで典道がいいのかもよく分からなかった。誰か教えてください。
 
 
 
 
 
 
 

打ち上げ花火は結局どっちから見るのか

 
下からか横からか、平らなのか丸いのか、物語的にはどちらでもいいというのがおそらく正解。あなたといるからとかいっちゃっているので。物事がどうあるかより、あなたがどう思うかというのが重要ということってことかな。
 
 
 
 
 
 

ループものに関する疑問

この映画はループものに当たる。近いところではシュタゲの雰囲気がある。
 
 

STEINS;GATE

 
 
ループもののアンチテーゼってなんだろう。人生は後悔と断念の連続だから、あの時をこうしたいと思ったらキリがないのではないか。どこかで必ず折り合いをつけないといけない場面があるのではないか。時間制限がないからいつまでも満足いくまでループしてしまう。夏休みの課題を後回しにする小学生と同じなのではないか。だからこそ締め切りにも意味がある。期限があるからこそキャラクターが決断をする必要が出てくる。
 
 
 
 
なずなと典弘くんも気に入らない世界に行くたびにその世界を離れるつもりなのか。もしもを繰り返すのはいいけど、それって根本の問題は何も解決していない。自分の都合がいいように世界を改変しているように思えた。
 
 
 
シュタゲは繰り返しても抜けられない未来に対して、断念を選ぶ事によって先に進む。Reゼロ(アニメ)は最後まで諦めない道を選んだ。まどマギはほむらちゃんではなく、まどかが動く事によって状況を打開した。
 
 
 

Re:ゼロから始める異世界生活1 (MF文庫J)

 
 
 
これはループもののすべてに通じる課題だから、この映画だけが悪い訳ではない。だけど少しどうなんだろうなと思った。これからも考えていきたい。
 
 
 
 
 
 

最後に

酷評ほどにはつまらなくない。むしろ良い作品。なので見たことない人には視聴を進めたいと思ってます。ここまで読んだ人は視聴済みの人だとは思うけど。
 
 
 
いつも通り、ペトロニウスさんの感想です。一読をお勧めします。
 
 
Blue-rayが出たらもう一回見直したいと思えるくらいには、いい作品でした。欲をいうならばなずなと典道の声が気にいらないことが一番の不満。
 
 
 
それではー