物語の思考法

~2次元と3次元をつなぎたい~

龍の歯医者 (2017) 感想 自意識を持つこと・自分の生きる意味とは

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評価:(星5つ)
 

 

終わった後のエンディングでとても不思議な感覚に包まれた。
それだけとてもいい雰囲気を出していた作品だった。
 
 
絵は綺麗。
戦闘描写もしっかりしている。
破綻のないグイグイ引き込まれるストーリー。
壮大に広がる世界観。
野ノ子の可愛いしぐさ。
そして音楽もとってもよかった。特にオープニングテーマ。
久しぶりに難しいを考えず物語に入り込めた。
 
 
 
この作品は全ての伏線をわかりやすく説明してはいない。けれども十分にそのヒントは散りばめられていて、それを考える楽しみもこの作品のいいところなのだろう。
 
 
 
それでこの物語は何を伝えたかったのか。
ただ龍が存在したよーってことを伝えたい訳ではないだろう。
 
 
 
僕はベルの成長の物語だと考えた。
 
 

ベルはどのように成長したか?

正直、野ノ子は自分の死を受け入れて達観しすぎているし、むしろベルを導く役目を担っている。そこから考えてもやっぱり主人公はベルになる。じゃあこの物語を通してベルはどう変わって行ったのか。
 
 
 
分かりやすい点では、ブランコを最終的に撃ち殺した点にある。物語開始以前=ベルが死ぬ前、にはブランコを銃を撃てなかった。しかし野ノ子との出会いや、歯医者の活動を通して、ベルの中で何かがかわり、銃弾おじさんを殺すという覚悟を得た。
 
 
 
じゃあその覚悟を持ったきっかけは何だろう。という部分になる。
 
 
 
最初の時点では世の中の流れに流されて生きていただけの状態だった。ここらへんは柴名さんがわかりやすく説明してましたね。そして歯医者の仕事をしながら、自分が蘇った理由を考え始める。そして修三さんの死をきっかけに歯医者の生き方や死生観にふれ、ベルはそれを否定する。死に対して執着が薄い歯医者たちを自殺したいだけの人と言う。
 
 
この時点でベルは自分の考えや、自意識みたいなものを持ち出している。貴族のお坊ちゃんだった子が歯医者の人たちの考えに触れて、かつ自分も死という体験を経たことから踏まえて自分の意見を持っている。この反発している姿がベルの精神的な成長だと感じた。姉さんの裏切りを見て敵も味方も裏切りものだらけとベルは感じ始める。
 
 
 
ベルは一度本当に死んだ。ベルは死にたくない。だから、死を受け入れている龍の歯医者にはなれない。野ノ子と別れるシーンで語っている。
 
 
 
って言っていたけど、まあここのシーンに関しては、本当はののこの死に自分が関わっているからとおもって一歩引いたんじゃないかな? とも思った。金髪が似ているとかを聞いているし、「何とかのキワ」のことも聞いているわけだし。野ノ子がベルの足を蹴ろうとして、ためらっている描写があった。だから野ノ子もある程度ベルの気持ちを察してしまっているのでは?と思った。何だか変な気分になった。どうなんだろう。
 
 
 
けど結局銃弾おじさんを見て野ノ子を守るために戻った。ブランコが相手っていうのもあったけど、それより何より野ノ子を助けたかったという部分が大きいはず。
 
 
 
ここからは想像だけど、最終的に殺戮虫をみて自分が蘇った意味を理解したのではないか。だからこそ野ノ子に殺戮虫の対処をまかせ、自分は龍が死ぬ原因となる銃弾おじさんを殺しに行ったんじゃないかな。今度は自分の意思で、決着をつけるために。野ノ子を救うためにも、自分にケリをつけるためにもブランコと対峙する必要があった。たとえ自分が死ぬとしても戦う必要があった。
 
 
 
 
最終的にベルには人生に対する未練はなかったと思う。ベルが持っていた銃が歯の外側に排出されている描写がそれを表している。
 
 
 
僕的には、自意識を持たないベルが、黄泉がえりや野ノ子、歯医者の人たちを通して自意識を獲得していく物語だと解釈した。
 
 
 
 
ベルの意識の変化に対しては本当にはっきり示されていないため、今後見直した時にいろいろ変わっている可能性はある。けど2回見たけど、正直3回目も全然見れる自信がある。それくらい深みのある作品でした。
 
 
 
 
自分で選べなかった少年が、最終的に自分の意思で行動するようになる。そんな変化がこの物語で示されている。
 
 
 
 
 

 ベルの成長に野ノ子はどう関わったか

間違いなくベルの成長に大きく関わったのは野ノ子。野ノ子のまっすぐな生き方やはっきりと意見を持って行動する姿がベルに影響したんじゃないのかな。いつも一緒にいることでいろんな意見を交わしただろうし。そんな存在だからこそベルは一度別れたとしても、ブランコが現れた瞬間に助けに行った理由にもなる。
 
 
 
まあなんだかんだ言っても野ノ子がいたからこそベルの成長があるってことでいいはず。難しいこと考えずにそうしておこう。
 
 

その他疑問に思った点

だいたい解決したのでメモっておく
 

・ベルはなぜ蘇ったの?

ベルが蘇った理由は、龍が死ぬという悲劇を回避するためだろう。龍が勝手に決めたって言ってるし。逆に言えば龍の意思が介在しているってことになる。ベルが蘇ったことは不吉の予感だって冒頭で言っていたけど、それはまさにあたりで、おそらく龍自身が自分の死を回避するためにベルを蘇らせた。
 
 
つまりは龍が死ぬような自体がもうすぐ起こるというわけなので、言っていることはあっている。見落としている点はベルが不幸の象徴であると同時に、ハッピーエンドへの重要な鍵であるという点か。龍の歯医者を選ぶために、その人の死に際=未来を見せるくらいだから自分の未来が見えてもおかしくはないだろう。
 
 
 
 

・野ノ子は何のために生きているの?

死を目の前にしてそれを受け入れた。野ノ子はすでにこの時点で覚悟ができている。
野ノ子が生きる目的は死ぬ日まで美味しいご飯を食べて暮らしたい、つまり楽しく生きることってことだろう。
 
 
どうでもいいような生活をつづけていたから、もう死んでもいいとでもおもっていたんじゃないかな。それが龍の歯医者の試験に合格して死ぬ日がわかった。だからそれまで龍の仕事を全うして楽しく生きていきたいと思った。それが野ノ子生きる理由。
 
 
 
 

・野ノ子が死ぬ伏線はどうなった?

野ノ子が死ぬ時には隣で龍が死んでいた。つまりベルが龍の死を回避した時点で、死は回避されたということだろう。
最後の方で野ノ子を殺すはずだった兵士が戦場にいたので、もしもベルがいなければ、龍が死んで野ノ子は顔キズの兵士に殺されて伏線回収する予定だったのだろう。ここからもベルが龍の死を回避するために蘇ったと考えられる。
 
 
 
 

 ・なぜ姉さんは龍の歯医者を裏切ることにした?

これは本人が言っていた。歯の中にいる竹本さんに会いたかったから。
 
 
 
 

 ・仲間を殺した姉さんを優しく受け入れすぎではないか

龍の歯医者は死に慣れている節があるので、あまり気にしてないんじゃない?(てきとう)
多分姉さん自身は誰一人自分から手を下していないからかな。龍を沈める時も歯医者の人を助けようとしていたし。
 
 
 

 ・龍って結局何者だったの?

伝説の生き物
昔:「ある国」が兵器として扱っていた。
今:戦争に使われることはなくなった。
 
 

・龍の歯から出てくるものってなに?

龍の歯は死者が通るトンネル的なもの。虫歯菌は人の思いの残りカス。
 
 

 ・未来では歯医者はどうなった?

いるみたい。今でも「確かに存在する」って冒頭で言っている。
 
 
 

・ブランコさんは何で銃弾が当たらないの?

作中では特に明示されていない。
あるブログでは、元歯医者でキタルキワを見ていて、まだ自分が死ぬところじゃないとおもっていたのでは?という考察があった。そうかもしれないし、そうではないかもしれない。まあ正直そこがこの物語の中心ではないからどうでもいいけどね!
 
 
 
 

最後に

なーんてことを書いた後に公式サイト見たら、はっきり書いてあるじゃないですか。
少女は選んでここに来た
少年は選ばれてここにいる
 
って。
 
だいたい作者の考えに近づけたかな…
まあ最終的には視聴者の解釈なので気にしてもしょうがないけど。
 
 
トーリー展開もいい
キャラもいい
作画もいい
演出もクールです。
戦闘シーンとかもいい
疑問を抱えるような矛盾もない
世界観も広がっている
 
 
確かにこのアニメは1度はみるべきものです。
blue-ray発売しないのかなー。絶対買うのにー
 
それではー
 

 

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