原稿用紙10枚を書く力 (2007) 感想 「4000字の文章を書けるようにするには」
評価:★★★★☆(星4つ)
テレビでも有名な斎藤孝さんの本でした。
原稿用紙10枚=4000字を書けるようになるにはどうすればいいの?っていうのがテーマでした。でもその書く内容は主に、どうやったら中身のある文章を、4000字書けるようになるのかという感じでした。
本を読みながら重要な部分を引っ張り出して、それを元に構成を作って、文章を書いていけ。ということでした。どう文章を書いたらいいかわからない人にも最初にどうしていくかという手段を提示しているところが良いポイントでした。しかし全体を構成した後の文章の書き方については少し投げやりなので、別の本を参照する必要ありって感じでしたね。
以前読んだ「いますぐ書け、の文章法」は「どうやったら読者が読みやすい文章になるのか」という部分に注視されていました。「いますぐ書け、の文章法」の目的とは違ったものになっていました。
文章は全体の構成とその中身に分けられるとして、構成の方法が「書く力」で、中身が「いますぐ書け」って感じです。2つを合わせて読むと主張が違っている部分や、両方合わせるといろいろしっくりする部分もあってとても面白いです。
さっきあげた文章全体を構成した後の文章の書き方に関しては「いますぐ書け、の文章法」を見ると参考になります。
「書く力」の導入部分に「書くと考える力がつく」とか書いてありますが、僕は興味ないので今回は「文章を書く方法」という部分にだけ注目して読んでみました。今回もそこの部分だけまとめておきます。せっかくなので「いますぐ書け、の文章法」と記述が似ている部分は、比較しながら書いていきます。
結論的には
- 書く前にポイントを3つあげて、それを元に文章全体を構築する
- 3つのポイントから1つの柱を立てる
- 文章を書いていく
このような順番で書くことが言われていました。
まずはそもそもなんで文章書くの?って部分から入ります。
ちょっと休憩。
文章を書くとはどのようなことか
そもそも文章を書くとはどういうことなんでしょうか。
「書く力」より
文章を書く動機は人に伝えたい中身があることにある。
まあそうですよね。何かを伝えたいからこそ文章を書く。当然だと思います。
「書く力より」
何かを取り上げて書くときは、そこに新たな価値を発見し、生み出すことに意味があるのだ。
主義主張がある文章とは、意味がきちんと含まれており、それが第三者にクリアにわかるものだ。
文章の中に読み手になんらかの「気づき」を与えるものがなくては、読む意味もない
ここが大事な部分ですね。筆者自身に伝えたい内容があり、加えてその内容の価値を正しく伝えることが大事ということになる。
これは「いますぐ書け、の文章法」でも共通してました。むしろこっちの方が言ってることがストレートでした。
「いますぐ書け、の文章法」より
文章を書くのは、人を変えるためである。
もっと厳しく書けば、
「いますぐ書け、の文章法」より
お客さんの時間をいただいて自分の書いたものを読んでもらうのだから、読んだあと、読む前と何かが変わったとおもっていただけなければならない
つまり文章を書くときには伝えたい内容を意識して、それをわかりやすく伝える工夫をしないといけない。内容を読んで筆者の価値が伝わらなければその文章は失敗であり、正しく伝えるためにしっかりと文章を組み立てられるようになる必要がある。
じゃあ次にそうするためにどうするかって部分ですね。
ちょっと休憩。ここで半分くらいです。
文章の構成方法
「書く力」では、本を読みながら大事なところ、興味のあるところに線を引く。その中から3つほど取り出して、その3つに共通するものを考えて文章の柱とする。その柱を中心に3つのポイントを展開させて文章を書く。
3つのポイントをつなげることで論理が組み上がり、オリジナリティも出てくる。項目ごとに書く内容を100字くらいで書き出して、全体の骨組みやあらすじを作る。そしてそれを元に文章を書いていけばいい。というものだった。
つまり
全体の構築 → 文章
という流れになる。
ここに関しては「いますぐ書け、の文章法」と真っ向から対立していた。
「いますぐ書け、の文章法」では、最初に伝えたい結論を直感で決めて、その後にとにかく書いて、書きながら内容を考えろというスタンスだった。
「いますぐ書け、の文章法」より
私が知らないだけで、最初から最後まで制御しきった文章で一冊の本を書く先生がいるのかもしれない。ごくろうさまである。もしいたとしても私はよみたくないですその本。ぜったいつまんないから。
「書く力」に真っ向から喧嘩を売っていますね(笑)。最初に構成を考えてそれに沿って書くというスタンスとは全く逆。超面白かったです。
でも何も考えずに書いているわけでないみたいです。
事前に、書く内容は決めてある。最終的に言いたいこともほぼ決まっている。どっちの方向にいくか、どこが着地地点か、それは事前に見えている。ただ、それをどんなところから導入して展開して、その着地地点へ向かうのか、そういうビジョンは持たずに書き出す。それは、書き出した後、誰かが引っ張ってくれる力によって書いて行くものだからだ。
つまり結論を元にどんどん書いて、最後に削るというスタンスということになる
まず段落ごとにチェックを入れる。段落の最終行が短い段落をまず詰めて一行減らす。それを数段おこなう。あと、最初の導入にすごく関係ないことを書いてることが多いんで、いわばスターターの台になっていた部分をどさっと削る。2段階ぐらいまとめて切る。そのあと、まだ削らないといけないときには内容としてあきらめる部分を決める。だいたいの場合、どうでもいいようなエピソードを残して、結論部分を繰り返してることが多いんで、結論のところを徹底的に削る。そうやって、行数を合わせる。
つまり
文章 → 全体の構築
という順番になる。
一方「書く力」では
引用
逆に、思いついたこと、心に浮かんだことをどんどん書いていくという、構築をあまり意識しない書き方もある。この場合は、思いつきのママに書いていくのだから、全体の統合は最初は頭になくてもいい。自分の生命力を推進力にする書き方である。しかし、この方法の場合、文章をしまったものにしていく作業が必要となる。前者が膨らませる方法に対して、これは書いた後に絞り込むという方法である。この場合、絞り込みができないと、思いつきだけのだらけた、何をいいたいのかわからないものになってしまう。
とにかく量を書いて、そこから構成しなおし、不要な部分を削除し、人に読んでもらえるレベルに持っていくことが必要であり、それが次の段階の訓練である。その上で、今度は質(内容)を充実させていけばいいのである。
つまり
「いますぐ書け、の文章法」と「書く力」の文章の作り方は真逆になっている。
ってことです。
前者はとにかく書いて書いて、最後に削る。後者は最初に構成を作ってそれを元に文章を組み立てる。この違いは一体何からでてくるのか。それは「慣れ」みたいです。
「いますぐ書け、の文章法」より
だから、それは、慣れである。書き慣れていない人が最初からそういうことができるわけではない。おれだって、駆け出しのライターの時から何も考えずにすーっとかいていて、戦略なく書いているけど大丈夫かしらと思いつつも後から読み直すとけっこうふつうに読める、ということになったのはたぶんライターをやってから10年以上経ってからだ。
じゃあ初心者はずらずら書いていくやり方をするべきでないのか。そうではないようです。
「いますぐ書け、の文章法」より
文章を書く醍醐味は、文章の次走に任せるところにある。そういう文章は「書き手であったはずの自分」さえも「読み手として驚かせる」ことができるのだ。
それが文章の持っている最も強い力の一つになっている。
つまり文章は結論を先に出して、あとは書きながら考える。あとは数を重ねて上手くなればいい。というのが「いますぐ書け、の文章法」のやり方になる。「書く力」の斎藤さんも、とにかく書くやり方ができなかったから、先に構成を考えて文章を組み立てる方法にしたそうだ。
確かに「いますぐ書け、の文章法」の作者の堀井健一郎さんはフリーライター。中身よりもまずは面白さが重視される。だからまずは勢いを持ってとにかく書くことが重要になってくる。「書く力」の作者の斎藤孝さんは大学教授。大学教授は論文で面白さよりもまずは中身としっかりとした構成が求められる。この立場から考えれば文章を作る時のスタンスに違いがあるのも当然です。
じゃあ実際に文章を書くときにはどうしたらいいのか。これに関しては最終的に人によるので、2冊を踏まえた上で僕がどうやっているかという例をあげておきます。絶対にこうすべき!という訳ではないです。参考までに。
まずいくつかポイントを挙げてみます。そしてポイントごとの結論に至るように文章を組み手てていくという方法を取っています。「今すぐかけ、の文章法」の文章の組み立てかたは少し上級者向けです。
けれども文章は書きながら内容がまとまっていくというのは全面的に同意です。だけれども初心者ってどう文章を書き出したらいいかがわからなくなるので、そこは「書く力」の方に賛成です。けれどもガチガチに構成を作るのって本当に本当にめんどくさいんですよね。構成を立てる時点で挫折してしまう人もいるはずです。
そのため、僕的にはどちらかの方法に寄るのではなく、ある程度構成を作った後はさっさ書く方に切り替えて、どんどん書いて行くのがいいと思います。
もう少しで終了です。
文体をどうするか
ここの章に関しては「書く力」の方は参考にならなかった。この本では何よりも文章を構成する力が重視されている。なので構成した後の文章を書く過程は構成する部分ほど重要ではないのだろう。ここが気になる人は「いますぐ、書けの文章法」を読むことをお勧めします。
「書く力」では
生命力のある文章
を書くことが求められていた。生命力のある文章を書くためには自分なりの文章スタイルを身につける必要があるらしい。つまり具体的な方法は自分で探してくれ、ということになっている。
多くの文章を読んで、たくさんの文章を書いて自分の立ち位置を見つけようということになってしまっている。確かにその通りだけど、ちょっと投げやりな感じもした。
「いますぐ書け、の文章法」より
文章はあくまで個人から発するものである。
「とにかく、書けの文章法」では、結論を先に出してどんどん書いていくことが求められていた。その際に、「主観的」に書くことが求められていた。客観的に書かれた文章は使えないからだそうだ。主観を入れることによって個性が現れる。
客観的な文章が使えない例は本文中の例が秀逸。
客観的
食べたのものは味噌らーめん。麺はストレート麺、スープはオーソドックスな味噌味。具はチャーシュー一枚、メンマ、もやし、玉ねぎ、ワカメ。調味料としておろしたニンニク・辛味噌・すりゴマが置いてあり、味に変化をつけられます。無料で麺大盛り化ができるし、11時〜16時の間はご飯一杯無料なのでお腹いっぱい食べることができます。
主観的
ここのつけ麺はスタンダード的な印象を持っているのですが、他を食べて行くにつれよそより甘いものだということを知りました。麺がやや水っぽいので、それにタレの味が合わさると、まさに、まさに、という感じのいい濃さになります! そこがすごい!
生命力を出すには、自分の主観を入れればいいってことですね。他には「文章を言い切ること」などがあるので、気になればどうぞ。
最後に
ここまでで5000字くらいです。原稿用紙10枚=4000字は超えられましたね。
今回は文章中にも書いた方法でやってみました。つまりポイントをいくつかあげてから、あとは書きながら内容を考えていく方法で書きました。
最終的には文章の書き方なんて自分次第なので、僕もこの2冊を参考にして自分の書き方を確立していきたいですね。
「書く力」の感想なのに「いますぐ書け、の文章法」の方がいっぱい書きました。タイトル詐欺になったかも。
次はこの書き方をアニメの感想の方に生かしていきまーす。
それではー
今日の一曲